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そろりころり その1

by 北見花芽

はい、このタイトルを見て、また『曽呂里(そろり)物語』を取り上げると思ったあなた!

さすがにそんな同じ作品ばかりは取り上げません(笑)

本当は同じ作品を取り上げ続けた方が楽なんですけどね(笑)

もし、同じ作品が続くことになったら、その時は「ああ、完全にネタ切れになったんだな」と思ってください(笑)

「そろりころり」のタイトルの意味は次回以降に分かります。

というか、わかる人はとっくにわかってると思いますが(笑)

というわけで、今回取り上げるのは貞享三(一六八六)年二月に出版された『鹿の巻筆』巻三の三「堺町馬の顔見世」というお話です。

『鹿の巻筆』はいわゆる小噺(こばなし)・笑い話を集めた本です。

作者の鹿野武左衛門は、落語の始祖の一人として数えられたりもします。

舞台は江戸でございます。

タイトルに出てくる「堺町」とは芝居小屋があった場所です。

当時の歌舞伎役者の契約期間は、十一月から翌年の十月までが1シーズンでした。

十一月の舞台は、メンバーの入れ替えなどがあって新たなシーズンのお披露目の興行になります。

つまりタイトルにある「顔見世」とはこの興行のことを言います。

その十一月顔見世興行市村座で初舞台を踏む斎藤仁五兵衛という役者がいました。

仁五兵衛の前職は米河岸刻みタバコを売っていました。

米河岸魚河岸は聞きますが、米河岸は聞きなじみが薄いですよね?

要するに、米問屋とかが集まってた場所です。

当時、で運ばれてきましたから河岸にあったわけです。

仁五兵衛は口が達者で、ハンサムな男だったので、「役者になればいいのに」と人に言われ、自分でもまんざらでもなかったので、市村座の親方の竹之丞太夫の所へコネを使って取り入り、芝居に出ることになったのです。

いよいよ明日から顔見世興行に出るというので、仁五兵衛米河岸の若者たちに「初舞台なので、どうか(ご祝儀)を出してくださいませ」と頼みました。

仁五兵衛に目をかけていた二三十人が相談して、せいろう(蒸籠―ザルソバとかの器に使うやつね!)四十段と、一間(約1.8メートル)もある大きな台に唐辛子を積んで、上に三尺(約90センチ)もある作り物のタコを乗せて、「仁五兵衛殿へ」と貼り紙をして、芝居小屋の前に仰々しく積んだのでした。

このタコの作り物が挿絵にでも描かれていたら、タコ好きの方は狂喜乱舞したのでしょうが、残念ながら挿絵には描かれておりません(笑)

このタコ、何で作ってあったんですかね?やっぱ食べ物で作ってあったんですかね?
どちらにしても、唐辛子とタコで真っ赤っかで、さぞかし目立ったことでしょうね(笑)

仁五兵衛はとっても喜びまして、「おそらく伊藤庄太夫(当時の人気役者)と私が一番をいただいたでしょう。いっそのこと芝居を見物して行ってくだされ」と言うので、米河岸の知り合いが大勢芝居見物に訪れたのでした。

ですが、仁五兵衛は新人役者ですので、人並みの役は与えられるはずもなく、最後の演目の馬役を与えられ、しかも、頭の方(上半身)は色々と芝居をしなければならないので、尻の方(下半身)。。。

さて、仁五兵衛下半身役が登場すると、米河岸の客が一斉に「いよ!馬様!馬様!」と大声援を送ります(笑)

仁五兵衛もこれに応えずにはおられるかと思い、「いいん!いいん!」と鳴きながら(今だと馬の鳴き声は「ひひーん」ですね)舞台中を跳ね回ったのでした。

おしまい

あ、これのオチわかりました?

馬の尻なのに鳴いちゃったってことですよ(笑)

とまあ、たわいのない、なんてことない笑い話なのですが、この話が数年後にある事件を引き起こすことになるのです。

つづく

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